１ §177「対抗することを得ず」の意味 † 
Ｑ 二重譲渡の法的構成 思Ｐ121 答Ｐ152
不動産が二重譲渡された場合において物権変動は既に契約成立時に生じているから、
第二譲受人が目的物を譲り受けることはあり得ないのではないか
→
(理)
登記を得ないうちは、物権変動は不完全にしか発生しないから、
元の所有者も第二譲渡が可能である。
そして
登記を備えた者にはじめて完全に物権が移転する
(1)不完全物権変動説
(2)相対的効力説
(3)否認権説
(4)債権効果説
(5)第三者主張説
(6)公信力説
２ §177の適用範囲１(Q 登記を要する「物権変動」とは何か) †
(1)本来的対抗問題（二重譲渡） †
Ｑ１ 意思表示に基づくものに限るか [155]
Ｑ２ 無制限説 対 制限説
(2)疑似的対抗問題 †
Ｑ１ 177条の対抗問題か否かの判断基準 [156] †
各論 †
�）［Ч坩戮量妓� 思Ｐ138
��契約の解除・取消(復帰的物権変動) 思Ｐ135,137 [163]
解除とは、債務不履行をされた債権者が自らの債務から逃れるために、契約関係の離脱を認めた制度である。
このような趣旨からすれば、解除の効果は、契約関係の遡及的無効と解するのが直裁である。
とすれば
五四五条一項但書は解除の遡及効を制限し、第三者を保護する趣旨の規定であり、
第三者とは→解除前の第三者をさす。
この場合の、第三者の保護要件としては、解除原因の善意・悪意は関係ない。
(理)解除原因があっても、第三者は取引の相手方の債務の履行を期待しうるからである。
但し、
第三者は何の帰責性もない本人の犠牲の下に保護されるものだから、ある程度強力な地位を得る必要がある。
そこで、第三者が保護されるには、権利保護要件として登記が必要である。
一方
解除後の第三者は、解除の時点で、本人への復帰的物権変動を観念しうる。
とすれば、第三者と本人は二重譲渡類似の関係に立つから、登記の有無で勝敗を決することになる。
�Ａ蠡�
Ｑ１単独相続の場合 [157]
Ｑ２共同相続人の単独相続の場合 思Ｐ50,134
共同相続人の一人が勝手に相続不動産を自己名義に登記してこれを第三者に譲渡した場合に自己の持分を侵害された相続人は第三者に対し登記なくして対抗できるか [158]
本問のごとき登記は、他の共同相続人の持分については単なる無効登記でしかない。
また、登記に公信力はない。
しかも
近い将来に遺産分割で変更されるべきものだから、相続分ついての登記を要求するのは酷である。
従って、Ｂは登記無くしてＣに対抗できる。
なお、九四条二項類推によって取引の安全を図るべきである。
Ｑ３相続放棄の場合 思Ｐ50,134
Ａが死亡し､甲乙が家屋を共同相続し､乙が相続放棄したが､ 乙はそれにもかかわらず単独登記をした。
ところが､乙の債権者丙が乙名義の本件家屋を差押さえた｡
Q 乙の相続放棄によって甲が取得した乙の持分につき､甲は登記なくして対抗できるか[159]
例�。舛�Ｂに自己の持分を処分。にもかかわらず、Ａが相続放棄
�■舛�相続放棄後自己の元の持分をＢに処分
相続放棄をなした者から相続財産を譲り受けた者はいかなる取扱を受けるか。
相続放棄の効果は遡及的無効であり、九三九条には第三者保護規定はない。
従って、Ｂは一切保護されない。
そのように解しても、放棄の熟慮時間は三ヶ月と短いし、放棄の有無は家庭裁判所に問い合わせることで知りうる。
従って、取引の安全を不当に害するとはいえない。
Ｑ４遺産分割の場合 思Ｐ51
Ａの死亡後甲乙が家屋を共同相続し､遺産分割により甲が家屋全部を取得したが､
乙が単独登記したうえ､丙に売却した場合の甲丙の関係 [160]
例 甲土地 → 遺産分割によって全部がＡのものに確定したが、Ｂがもとの自己の持分についてＣに譲渡した場合
まず、もともとＡの持分であった部分については、登記なくして、第三者に対抗できる。もともとＡのものであるから、Ｂの登記は単なる無効登記であるからである。
それに対して、Ｂの持分であった部分については別の考慮を要する。
遺産分割後は財産を取得した者は遅滞なく登記をすべきである。
また
元の相続人から遺産分割を受けたものと取引の相手へと、それぞれへの二つの物権変動を観念できる。
従って
二重譲渡類似の関係にあるものとして、登記の有無によって勝敗を決する。
�の�木所有権留保譲渡 思Ｐ135
(1) 甲は乙に土地を売却し､その際､土地上の立木の所有権を留保したが､
その旨の明認方法を施さないでいる間に､丙が乙から立木を含めて土地を
譲受け､登記を済ました｡丙は立木の所有権をも取得できるか｡ [161]
(2) 乙は甲から譲り受けた土地(未登記)上に自ら立木を植栽したが､
その旨の明認方法をしない間に､甲から立木を含めて土地を二重に譲受けた丙が
登記を済ました場合の立木所有権の帰属如何 [162]
�セ�効による所有権取得 思Ｐ135 答Ｐ92、153
(1) 甲所有の土地を乙が善意・無過失で入年間占有していた際､
丙が当該土地を甲から譲り受け登記をし､乙がその後二年間占有を縦続した場合
(登記尊重説) [142]
(2) 甲所有の土地を乙が善意・無過失で12年間占有していた際､
丙が甲から当該土地を譲り受けた場合(登記尊重説) [143]
(3) 紛争類型説 [144]
(1)売渡後の占有者に取得時効が完成した場合 時効取得を持って売買の相手方に主張するには登記が必要か。
→不要
(理)
目的物の所有権は所有者、買主、占有者と移転している。
これは、占有者が買主から承継取得を受けた者と同視できる。
(2)目的物の占有者が時効取得後目的物が取り引きされた場合
→必要である
(理)
この場合、時効取得者と、買主は二重譲渡類似の関係にある。
また
時効取得したならばその者は遅滞なく登記すべきである。
なお
取得時効の起算点をずらして主張することは否定すべきである。
右のような区別が無意味となるからである。
この点判例は、
�仝興衢�者と時効取得者との当事者関係において、時効取得者は登記なくして対抗できる
��第三者が時効完成前に出現した場合、第三者は当事者（所有者）であり、
時効取得者は 登記なくして対抗できる
�Ｂ荵絢圓�時効完成後、登記を経ないうちにに出現した場合、
時効取得者は登記なくして 対抗できない
とする。
しかし、第三者にとっては時効取得者の占有開始は関知しないので、
このような偶然の事情によって権利の取得が左右されることは法的安定性に欠ける。
さらには、時効取得者が１８年占有した後に、前所有者→第三者の登記がなされ、
２０年経過して時効が完成した場合、
時効取得者は善意・無過失だと第三者に対抗できないのに、悪意だと対抗できる
ことになり、均衡を失する。
そこで、
時効の起算点を問うことなく、時効期間は現在から遡って起算すべきであるとしたうえで、
第三者の保護は94条２項を類推適用する、という見解がある。
しかし、
それではおよそすべての第三者に対抗できる結果となり、妥当でない。
そこで
時効取得者が時効の援用をしたとき以降は、対抗要件によって決すべきである。
なぜなら、援用時以降に登記を放置することは対抗要件主義に悖るものだからである。
��新賃貸人がなす賃料請求・解約申入・明渡請求 思Ｐ242 答Ｐ152,249
賃貸人の地位の移転(新賃貸人(新所有者)が従前の賃借人に対して賃料の
請求・解約申入れ・明渡請求などをなす場合､新賃貸人は所有権移転登記を
具備することを要するか [164]
��不法原因給付
(甲は､乙との妾関係を維持する目的で､未登記の建物を乙に贈与し引渡を済ませたが､
乙が未登記であるのを奇貸として､自ら保存登記をしこれを丙に譲渡した｡) [166]
�┻�偽表示
��詐害行為取消
��甲が建築中の建物を乙に譲渡し､乙がそれを完成したが､甲は勝手に右建物の
保存登記をし､丙に譲渡して移転登記を済ました｡
Q 乙丙の関係如何 [165]
(3)例外（登記を要しない物権変動） †
３§177の適用範囲２（登記を要する「第三者」の意義） †
Ｑ１「第三者」とは [167]
→当事者及びその包括承継人以外の者で
登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者
(理)§177の｢第三者｣に、条文上は何の限定もない。
しかし、
権利者は、全くの無権限者に自己の権利を主張するにあたって、登記が必要とされるいわれはない。
Ｑ§177｢第三者｣の主観的要件 [168]
ｑ悪意者を含むか 思Ｐ119
(1)肯定説
(理)正当な取引の範囲を逸脱する者ではないから
(2)否定説
ｑ背信的悪意者は第三者にあたるか 思Ｐ1、119、122 [169]
→ 否定
(背信的悪意者→高額に目的物を第一譲受人に譲り渡す目的がある者等)
(理)正当な自由競争の枠を超えているので
背信的悪意者の認定基準 [170]
ｑ背信的悪意者より善意で権利を取得した者の地位をどのように保護するか [171]
(背信的悪意者からの譲受人も他の譲受人に全く対抗できないのか)
背信的悪意者排除説をとった場合それをどのように理論構成するか
→できる(登記の有無のよって決するべきである)
(理)背信的悪意者は、信義則上権利を主張できないだけで、無権利者ではない
(譲受人も目的物の権利を承継取得している)
Ｑ所有権対利用権のケースでも同様に扱ってよいか
建物所有による土地の不法占拠と建物所有登記 【143】
(甲所有土地上に乙が何らの権限なく建物を建て､これを丙に売却したが､
建物所有登記は乙のままにされている｡
甲は誰を被告にして建物収去及び土地明渡を請求すべきか)
【論点】二重譲渡で売主と買主の地位が同一に帰した場合
例 ＳがＡとＢに二重譲渡、Ａが登記を得る
�。舛�Ｓにさらに目的物を譲渡
Ｑ Ｓは登記をＢに移転する義務あるか。
→ ある
(理)Ｓの地位を保護するとすれば、Ｓが契約を解除するために、登記制度を悪用するおそれがある。
�■咾�死亡してＡが相続。Ｑ Ａは登記をＢに移転する義務あるか。
→ない
(理)相続のごとき偶然の事情でＡが所有権を失うのはＡに酷である。
Ｑ不法行為によって二重譲渡された目的物が滅失。誰が損害賠償を請求できるのか [172]
目的物の支配を有するものが損害賠償請求をなし得る。
まず、
(1)二重譲渡の帰趨が決している場合
→登記を備えた者が請求権者となる。
そのものが目的物の正当な権利者であるからである。
(2)いずれの譲受人も登記を備えていない場合
→譲受人はいずれも目的物の代金を支払わなくてよい。
したがって、目的物の譲渡人が一次的な請求権者となると解するのが公平である。
又、
両譲受人については自らが確定的に権利者となりえ、
目的物を取得できたことが立証できれば、損害賠償請求ができる。
４登記に関する問題点 †
登記の有効要件 †
一般的有効要件
借地借家法§10-1の有効要件
Q 長男名義の建物登記は土地賃借権の対抗要件として有効か。[173]
| (理) |
有効説
(通説) | 建物登記に土地賃借権の対抗力を認めた趣旨は賃借人を保護する点にある。
従って
公示の徹底の観点でなく、建物居住者保護の観点から考えるべきである。
そこで
土地を取引きする者は通常現地検分を行うのが通常である。
しかも、
近親者の登記でも、借地権の存在を外部から知ることは十分可能であるから、
取引の安全を害する可能性は少ない。 |
無効説
(判例) | 他人名義の無効登記に過ぎないから、対抗要件としても効力がない |
Q 表示登記の対抗力 [174]
Q 不法に抹消された登記の効力 [175]
登記の効力 †
仮登記の効力 [176]
登記の推定力 [177]
登記の公信力の有無 [178]
既になされた中間省略登記の効力 [182]
中間省略登記に対する中間者の抹消請求の可否 [183]
既になされた中間省略登記に対する抹消請求権者の範囲 [184]
Ｑ現在の権利者は登記の名義人に対して、中間省略登記を請求できるか
→中間者の同意があれば許される。
(理)
登記制度は権利変動の過程も公示することも要請されるが、中間省略登記はこの要請に反する。
しかし
一応現在の正しい権利関係を示していれば、登記の目的を達しうる。
もっとも
無条件に中間省略登記を認めた場合、中間者の登記請求権を害するおそれがある。
Ｑ中間者は、同意無く中間省略登記が為された登記の抹消請求ができるか
→抹消についての正当な利益がない限りできない
(理)
現在の権利関係が正しければ一応は登記の目的を果たしうる
そこで
無条件に登記を復帰させることはＣに酷である。
登記請求権 †
発生原因（一元説対多元説） [180]
中間省略登記請求権の有無 [185]
(不動産が甲→乙→丙と移転した場合､丙は乙を飛び越して､直接甲に対し､自己への登記の移転を請求できるか)
不動産の売主は登記引取請求権を有するか [181]
![[shitumunote]](image/pukiwiki.png "[執務ノート]")
