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*序 犯罪と刑法 [#d197d547]
*第１章 刑法の基本的考え方 [#i6fe6a60]
刑法→犯罪と刑罰に関する法
根本にある対立利益→法益保護と自由保障
** 刑法の機能 [#d3ae079d]
*第２章 犯罪論 [#be8b0b07]
犯罪総論（犯罪の成立要件） 構成要件に該当する
違法で
有責な（責任を問われる）
行為をしたこと
&ref(判例ノート/刑法/刑法体系.png);
"刑法体系.png"
** 行為論 [#m9cce329]
Ｑ 行為論の機能
(理)
刑法は、内心を処罰するものではないし、単なるる反射運動を処罰するものでもない。
行為概念は右のような事実を行為から除外し、結果的に処罰範囲を限定する機能を果たす。
また、
不作為も刑法処罰の対象とすべきだから、行為に取り込めるものでなければならない。
Ｑ 刑法上の行為とは → 意思に基づく身体の動静
(理)人の行為が自然現象と区別できるのは、人の意思によって何らかの選択がなされている点に求められる。
また
単なる静止は自然的にみれば内心の意思・思想と区別がつかないから、
この点を区別できるように、行為観念を組み立てる必要がある。
Ｑ 忘却犯(Q 母親が睡眠中に乳児を圧死させる行為は、刑法上の行為と言えるか)
→行為と言ってよい
(理)
確かに、睡眠中の行為自体は意思に基づかない。
しかし
意思支配の可能性があれば行為である。
睡眠前に圧死しないようにすべきであったという点で、意思支配の可能性が認められる。
*第３章 罪刑法定主義と解釈 [#hf2d4cd9]
**１ 罪刑法定主義 [#eb2337c8]
１ 罪刑法定主義とは⇒犯罪となる行為とその行為に加えられる刑罰の内容は
予め法律によって定めておかなければならないとする原則
２ 根拠 理論上は→ 自由主義の尊重
法律上は→ 憲§31 §73 但書 §39前段 刑§６
３ 内容と派生原則
犯罪を認定し刑罰を科すには
�� 予め法律が発布されていなければならない（憲§39）
∴ 刑法は施行前の犯罪にまでさかのぼって適用されない（刑法不遡及の原則）
�� 成文の法律でなければならない
∴ 慣習法は刑法の法源にならない（慣習刑法排除の原則）
�� 法律の明文の規定がなければならない
∴ （類推解釈の禁止）
∴ 刑罰法規の内容は明確でなければならない（明確性の原則）
�� 刑期の長期も短期も定めずに言渡すことはできない（絶対的不定期刑の禁止）
刑罰法規適正の原則： 刑罰法規はその形式・内容において適正でなければならないとする原則
**５ 適用範囲 [#ae7b66e3]
１ 時間的適用範囲
２ 場所的適用範囲
３ 人的適･事項的用範囲
１.時間（どの時点からどの時点まで効力をもつか）
施行された時点から →刑法不遡及の原則が適用される
廃止・変更された時点まで →§６が適用される
２.場所（どの場所で行われた犯罪に対して適用されるか）
→日本国内(§1-1)･日本国外にある日本船舶又は日本航空機内(§1-2)
３.人（誰の犯罪に対して適用されるか）
原則 で生じた犯罪は 何人を問わない(属地主義)(§1)
§2に定める罪は何人を問わない (保護主義)(§2)
例外 以外で生じた §3に定める罪は日本国民が犯した場合のみ (属人主義)(§3)
犯罪のうち §4に定める罪は日本国の公務員のみ (保護主義)(§4)
刑法犯のうち条約により定められた罪は
何人を問わない (世界主義)(§4の2)
┌─────┬────┬─────┐
│ 犯罪地 │ │ │
├──┬──┤ 正犯 │ │
│国内│国外│ │ │
┌─┬────────────────┼──┼──┼────┼─────┤
│原│ │ *** │ │ │ │
│ │刑法の規定全部 ├──┼─────┤何人でも可│属地主義(§1)│
│則│ │ │日本の船舶
航空機内 │ │ │
├─┼────────────────┼──┼─────┼────┼─────┤
│ │国家的･社会的法益の一部 (種)(注)│ │ *** │何人を問わない│保護主義(§2)│
│ ├────────────────┼──┼──┼────┼─────┤
│例│個人的･社会的法益の一部 (種)(注)│ │ *** │日本国民│属人主義(§3)│
│ ├────────────────┼──┼──┼────┼─────┤
│外│公務員の職務犯罪の一部 (4種)(注)│ │ *** │日本国の公務員│保護主義(§4)│
│ ├────────────────┼──┼──┼────┼─────┤
│ │条約により定められた犯罪 │ │ *** │何人を問わない│世界主義(§4の2)│
└─┴────────────────┴──┴──┴────┴─────┘
┌────────────────────┬───────────┐
│ 正 犯 │ 共 犯 │
(注1)├───┬─────┬──────────┼─────┬─────┤
│犯罪地│ 適用犯罪 │ 実行行為者 │加功行為地│処罰の可否│
┌─┼───┼─────┼──────────┼─────┼─────┤
│ │ │全刑法犯に│ │ 国 内 │ *** (§1)│
│共│ 国内 │ │限定なし ├─────┼─────┤
│犯│ │適用あり │ │ 外国 │ *** (判) │∵共犯の
│ │ │ │ │ │ │ 犯罪地は
│の├───┼─────┼──────────┼─────┼─────┤ 正犯の
│処│ │§2〜4の2 │§2,4の2 限定なし │ 国内 │ *** (§1) │ 犯罪地
│罰│ 外国 │ │§3 日本国民 ├─────┼─────┤
│ │ │の犯罪のみ│§4 日本公務員│ 外国 │ × (通説)│
└─┴───┴─────┴──────────┴─────┴─────┘
*第４章 構成要件 → 刑罰法規に規定された違法かつ有責な処罰に値する行為 [#w7e59df2]
・身分：
一定の犯罪行為に関する犯人の特殊な地位又は状態
(男女の別，内外国人の別，親族の関係，公務員としての資格など)
・目的犯：一定の目的を主観的構成要件要素とする犯罪
・結果犯：構成要件の要素として一定の外界の変動すなわち結果を必要とする犯罪
・挙動犯：構成要件的行為としての人の外部的態度があれば足り、結果の発生を必要としない犯罪
・侵害犯：一定の法益を侵害したことが構成要件要素になっている犯罪
・抽象的危険犯：社会通念上法益侵害の可能性があるものとして類型化された犯罪
・具体的危険犯：法益侵害の危険が構成要件要素となっている犯罪
・即成犯：構成要件的結果の発生によって法益侵害が発生し、犯罪も既遂となるが、
その後、行為者が関与せずに法益侵害の状態が継続するもの
・状態犯：構成要件的結果の発生によって法益侵害が発生し、犯罪も既遂となるが，
その後、行為者が関与して法益侵害の状態が継続しても犯罪とはならないもの
・継続犯：構成要件的結果の発生とともに法益侵害が発生し既遂となるが，
その後も法益侵害が継続している間は犯罪の継続が認められるもの
**１ 構成要件の概念 (Q 違法類型か責任類型でもあるか) [#x2b2a8fa]
**２ 構成要件要素 [#x7b6e4e2]
◇行為の主体
法人の犯罪能力
◇行為
◇行為の状況
◇構成要件的結果
◇構成要件要素の分類
***(一) 客観面 [#adb3c04f]
***�擬孫垤坩戮箸� [#gc0bcf12]
→犯罪の結果発生の現実的危険を有する行為
→構成要件の予定する結果を惹起する程度の類型的な危険を有する行為
(理)刑罰法規は一定の法益保護を目的に規定されているので、
その点から実行行為の内容を判断すべきである。
｢危険｣→行為時に一般人が感ずるであろう現実の危険
(理)一般人に処罰範囲を明示するものだからである。
***�� 不作為犯 [#m1879be8]
不真正不作為犯→作為の形式で規定されている構成要件を不作為によって実現する犯罪
◆ 実行行為性
不作為が結果発生の危険を有するかぎり実行行為性を認めうる。
作為義務の体系上の地位
◆ 成立要件
(1)法律上の作為義務(保証人的義務)があること
要求される根拠
→ 不真性不作為犯については構成要件に作為義務が明示されていないから、
処罰範囲が無限定になる恐れがある．
そこで、
作為義務の有無によって成立範囲を限定すべきである。
作為義務の発生要件
�〃覯免�生の現実的危険が生ずること (結果発生の危険性)
��結果防止が可能であること (結果防止の可能性)
�９坩拏圓鉾鏗下�(法益)保護が社会通念上依存していること(依存関係)
依存関係発生の根拠→法令・契約・事務管理・先行行為による
�し覯緬瓢澆里燭瓩虜邂戮�可能であったこと (作為可能性)
(2)作為義務が生じたのに作為に出なかったこと
Q 積極的意思が必要か
◆ひき逃げ事犯の罪責(殺人罪･保護責任者遺棄罪の成否)
要求されるべき作為義務の程度･内容
*** �� 未遂犯【修正された構成要件】１ [#xa28e0e1]
-１ 予備･陰謀
予備→犯罪の実行の着手に至らない準備行為
陰謀→複数者間での犯罪の合意
-２ 未遂犯
１ 処罰根拠
２ 要件
(1)実行の着手(要件１)
Q 着手時期はいつか
一般的基準( 主観説・形式的客観説・実質的客観説)
→結果発生の危険性が高まる行為がなされた時
(理)未遂犯の処罰根拠は、結果発生の現実的危険を惹起した点にある。
↓従って
右の危険が高まる行為の開始時である。
"実行の着手時期.png"
(2)構成要件的結果の不発生(要件２)
-３ 不能犯
→犯罪を実現する意思で行為をしたが、行為の性質上、結果を発生することが不可能な場合
Q 不処罰とされる根拠 → 法益侵害の結果発生の危険性を欠いたから(具体的危険説)
Q 未遂犯との区別 → 結果発生の危険性の有無による
Q そのような危険性の有無はいかに判断すべきか。
→�々坩抻�に一般人が認識し得た事情 及び
��行為者が特に認識していた事情を基礎にして、
�０貳命佑魎霆爐剖饌療�危険の有無を判断する
(理)刑法は一般人への行為規範である。
↓
一般人から判断して結果発生の危険性があれば可罰性を認めてよい。
また、
基礎事情に特に行為者が知っていた事情を取り込まなければ、妥当な結論を導くことはできない
例 砂糖を飲ませる行為は一般に危険性はない。
but 被害者が重度の糖尿病患者であることを行為者が特に認識している場合を不能犯とすることはできない 。
VS 危険性を行為時に存在した全事情および行為後の事情まで含め事後的に純客観的に判断すべきとする説
(批)このように考えるなら、すべての未遂犯は不能犯ということになりかねない 。
"不能犯.png"
(1) 客体の不能
(例 Ａ家に向かってライフルを乱射したが、Ａはたまた旅行に出かけて誰もいなかった。)
Q 乱射行為は殺人罪(§199)の実行行為性といえるか
→肯定(未遂罪)
(理)もとより家には誰もいなかったのであるから、客観的には殺人の結果発生の危険はない。
↓しかし
一般人ならば、家に人がいる可能性はあると考える
↓よって
人の死の結果発生の具体的危険は生じる。
(2)方法の不能
Q1 硫黄入りウイスキーを飲ませて殺そうとしたが、硫黄には人を殺す毒性はないので、死ななかった。
→否定(不能犯)
(理)硫黄はもともと人に対して毒性がない以上、人に死の結果は発生しない。
↓そして
一般人も死の結果が発生する危険を感じない。
Q2 毒入りウイスキーを飲ませて殺そうとしたが、毒は致死量に達せず、死ななかった。
→肯定(未遂罪)
(理)飲ませた毒は致死量に達するものではない以上、死の結果は生じない。
↓しかし
量によっては人を殺害する可能性がある
↓よって
一般人の判断からすれば十分に危険性が感じられる。
***４ 実行の終了時期(主観説・客観説) [#v69eb5d4]
***５ 中止犯 （§43但書） [#cb54f575]
"中止犯.png"
□ 法的性格(必要的減免の根拠)
��(政策説)
(理)未遂である以上、犯罪は成立する。
↓しかし
犯罪を思いとどまった者に褒賞を与えると、犯罪の一般予防効果が期待できる。
↓もっとも
刑の必要的減免に過ぎない以上、犯罪の完成阻止効はそれほど期待できない。
↓従って
政策のみでは説明できない。
↓そこで、
��(法律説)(責任減少説) 以下の点で責任も減少するからである。
(理)犯罪の完成を思いとどまった者には、国民一般の規範意識から見て責任非難の程度が減少する。
□ 要件
(1)自己の意思により(任意性)
Q「自己の意思」とは(Q 任意性の判断基準)
→ 行為者が犯罪の完成を妨げる認識をもたず、
たとえできるとしても欲しないことをもって足りる
(理)必要的減免の根拠は政策的理由に加え、責任減少に求められる。
↓とすると、
行為者が犯罪の完成を妨げる認識を有していたことが必要である
↓しかし
積極的な後悔を要求することは、
中止犯が単に刑の必要的減免事由にすぎない以上厳格に過ぎる。
(2) 犯罪の完成を止めたこと(Q 中止行為)
Q1 どの程度の行為が必要か。
�｜綣衞た�(未だ実行行為は終了していない場合)→単に実行行為を止めれば足りる。
�⊆孫毀た�(既に実行行為が完了している) →実行行為を中止できない。
↓従って
結果発生防止の積極的努力が必要である。
↓そして、
その努力は真剣なものである必要がある。
(理)報償に値するものである必要があるから、
Q2 結果が発生しえなかった場合(因果関係がなかった場合)
→中止犯の規定の準用を認めるべき
(理)確かに、中止行為と結果不発生の因果関係はない
しかし、
致死量の毒を飲ませた後、結果発生を防止したときとの均衡を図る必要がある。
また、
この場合も責任減少は認められるし、報償も与えるべきである。
Q3 他人の助力があった場合
Q4 結果が発生した場合には要件を満たすか
→否定(中止犯はあくまで未遂犯である)
(理)もとより、積極的な中止行為を行った以上、責任は減少する。
↓しかし、
結果が発生すれば政策的に褒賞を与えるに値しない
□ 適用範囲(Ｑ 予備･陰謀の中止)
Q1 この場合も本条を準用して減軽・免除すべきか
→認めるべき
(理)もとより、予備行為には、中止が考えられない
しかし、
実行してから止めれば免除の可能性があるから、
実行した方が有利になると言う結論は是認できない。
VS 否定説（判例）
Q2 減免の基準となる刑はなにか
→免除のみを準用すべき
(理)この点、予備罪を基準とすべきとする説もあるが、
予備罪は基本犯を減刑したものであるから、これ以上減刑することはできない。
***�� 因果関係(構成要件該当性の問題 VS 発生した結果に対する客観的帰責の問題) [#k60f0a93]
→実行行為と構成要件的結果の間にある一定の原因と結果の関係
◆要件(因果関係の有無)
□要件(1)実行行為が存在すること
□要件(2)条件関係があること
公式→(ＡがなければＢがないであろうという関係があること)
Ｑ 仮定的因果関係の場合(例 Ａが車でＸをひいたが、Ａがひかなくても後続のＢが車でひいたであろうとき)
→条件関係はある
(理)あくまでＡがＸをひかなければ結果は発生しなかったからである。
条件関係公式からは、Ａの行為とＸの死は条件関係がないとなりそうである。
しかし、
条件関係は現実に発生した行為についてのみ考えるべきである。
すなわち、
この公式の適用を受けるのは当該の個別的行為であって、
仮定的な他の事実をつけ加えて判断することは許されない
Ｑ 択一的競合の場合→複数の独立した行為が競合してある結果を生じさせた場合に，
それらの行為のいずれもが単独で同じ結果を発生させることができた場合
例 ＸＹが(意思の連絡なく)Ａを殺そうと同じウイスキーに致死量の毒を入れる
Ｘの行為がなくてもＡは死亡したし、Ｙの行為がなくてもＡは死亡したといえる。
そうすると、
ＸＹの行為と死の結果との間には条件関係がないことになるのか
→条件関係はある
(理)
ＸＹが致死量の半分の毒しか入れていない場合は二人とも条件関係が認められる以上、右の結論は妥当でない。
危険な行為をしながら未遂に止まるのも不合理である。
そこで、
条件関係の公式を修正し、
いくつかの行為のうち、すべての場合を除けば結果が発生しない場合、
すべての条件につき条件関係を認めるべきである。
以上より
ＸＹの行為を一括して除けば結果が発生しないから、条件関係は認められる。
Ｑ 重畳的因果関係の場合→単独では結果を発生しえない行為が二つ以上重なり合って結果を発生した場合
→各行為に条件関係を認めてよい
□要件(3)相当性があること
→その行為からその結果が生じることが社会通念上相当といえること（相当因果関係説）
(理)条件関係のみとすると
条件関係は無限に広がるおそれがあるから、犯罪の成立範囲を限定できなくなる。
ところで
刑法上の因果関係は，構成要件該当性の問題である。
そして
構成要件は社会通念上，違法・有責と評価される行為を類型化したものである。
Ｑでは、相当性判断のためにはいかなる事情を基礎として考えるべきか
→ �＾貳命佑�認識しえた事情と
��行為者が特に認識していた事情を基礎とする
(理)経験則上偶然的結果でないものを基礎事情から排除することはできない。
一方で
因果関係は行為者にとって偶然的事情を帰責の範囲から除外するためである。
−狭義の相当性判断(行為後の異常な因果経過の場合)−
|>|CENTER:類型|CENTER:検討の手順|h
|(1)原因行為の危険性||�，泙此�(1)が結果に及ぼした影響|
|(2)介在事情の特殊性|�ー�己の行為|�⊆，法�(2)により生じた&BR; 当初因果の変更が&BR; 行為者に帰責されるか|
|~|�“鏗下圓旅坩�|~|
|~|�Ｂ荵絢圓旅坩�|~|
|(3)介在事情の危険性||��さらに、(2)により生じた当初因果の変更の程度|
□ 不作為の因果関係
要件(1)実行行為があること
要件(2)条件関係があること
**(二) 主観面 [#a53bd656]
◇(一)故意
◇ 故意とは → 犯罪事実を認識していること
故意責任の本質
犯罪事実を認識し，規範に直面しつつ反対動機が形成可能であったにもかかわらず，
あえて犯罪行為に及んだことに対する非難にある
◇ 体系的地位
Ｑ故意の本質は何か
故意とは→犯罪事実を認識していることをいう
ではどの程度の認識を要するか（意欲までも要するか）
これは故意の体系的位置付けによって異なる
構成要件要素にとどまるとすれば→不要（表象説）
責任要素でもあるとすれば →必要（意思説）
◇ 成立要件
→ 構成要件該当事実を認識すれば足る
(理)故意責任の本質は
行為者が規範に直面しているのにもかかわらず、
あえて犯罪事実を実現する点に
非難可能性が認められるからである
そして
構成要件に該当する客観的事実を認識すれば規範の問題が与えられている
◇ 未必の故意(故意と過失の区別)
→犯罪事実を認識しているが
その結果発生が蓋然性である場合をいう(表象説)
"故意の要件_1.png"
◇ 故意の成立に必要な事実の認識
***(二)事実の錯誤による故意の阻却 [#wec8b444]
◇ 錯誤とは
|>|CENTER:態様|CENTER:事実の錯誤|
|客体の錯誤|→行為は認識どおりの客体に向けられたが，その客体の性質が認識と異なる場合|CENTER:○|
|方法の錯誤|→行為自体が認識内容と異なる客体に向けられる場合|CENTER:○|
|因果関係の錯誤|→行為者が認識した因果の経過と現実に発生した因果の結果とが一致せずに予期した結果が発生した場合&BR;(例 首を絞めてる→ 死んだと思って海岸に捨てた→砂をすって窒息死)|×(事実の錯誤の問題ではない)&BR;(理)因果関係は構成要件の客観的要素であるが、故意の認識対象でない。|
・概括的故意：
第一の行為によって意図した結果を実現していないのに実現したものと誤信し，
第二の行為に出たところ，それによって意図した結果が実現したとき，
その実現までの全過程を概括的に故意があると認められたものをいう
◇ 故意を阻却する基準(各説の内容・根拠・当否)
◇ 具体的事実の錯誤(同一構成要件内の錯誤) (法定的符合説VS具定適符号説)
故意責任の本質は…（故意責任の本質について論じて）
とすれば
構成要件に該当する事実さえ認識していれば故意責任を問いうる。
従って、
認識した内容と発生した事実がおよそ構成要件の範囲内で符合していれば故意がある。
※ 故意の個数論
Ｑ 一つの客体に犯罪結果を発生させる意図で、二つの客体に犯罪結果を発生させた場合どのように処理すべきか。
→二つの犯罪が成立する
(理)�々柔�要件の範囲内における認識の一致しか問題としない。
とすれば、故意の個数は問題とならない
�△海里茲Δ鵬鬚靴討癲⇔昇瓩牢冉暗�競合となるから、刑の不均衡は生じない
◇ 抽象的事実の錯誤(異なる構成要件間の錯誤) (法定的符合説VS抽象的符号説)
→ 認識の内容と発生した事実とが2つ以上の構成要件にまたがって食い違っている場合
構成要件該当事実の認識がなければ規範の問題は与えられないから、
その認識がない場合に行為者を処罰することはできない。
従って、
故意は阻却される。
但し、
構成要件に実質的な重なり合いが認められる限度で反対動機を形成できる。
従って、その限度で故意責任を問いうる。
※ 実質的重なり合いの有無の判断基準(符合の有無の判断基準)
Q1 ｢符合｣の一般的基準
構成要件符号説 →�［昇瓩箸旅坩拌嵳諭�及び
��被侵害法益の共通性により判断する
法益符合説
Q2 有形偽造と無形偽造は符合するか
Q3 正犯と狭義の共犯は符合するか(正犯の故意で狭義の共犯を招来した場合)
Q4 狭義の共犯間(教唆の意思で幇助を招来した場合)
責任要素としての故意･過失
故意責任の本質
行為者が構成要件該当事実を認識し規範に直面し、反対動機の形成が可能で
あったのに行為に出たことに対する道義的非難である
故意非難を向けるには、一般人ならば当該犯罪類型の違法性を意識する程度
の事実の認識が必要である
◇ 違法性の意識の取り扱い( Q 故意の成立に、行為の違法性を意識したことを要するか)
違法性の意識→自己の行為が法律上許されないという意識
(1) 不要説(判)
(批)不可抗力によって違法性の意識を欠いても処罰するのは、責任主義に反する
(2) 厳格故意説
(批)違法性の意識ない場合は処罰できないとすると、
確信犯・行政犯の処罰において不都合を生じ、妥当でない。
(3) 制限故意説
(4) 自然犯法定犯二分説
(5) 制限責任説
(6) 厳格責任説(大谷)
→違法性の意識は故意の成立には不要である
違法性の意識は、故意とは別個の責任要素である。
行為者に違法性の意識の可能性がなかった場合には、責任を阻却する
"故意の要件_2.png"
◇ 事実の錯誤と違法性の錯誤の区別
□ Ｑ 区別の一般的基準
"錯誤区分.png"
□ 具体的問題
Ｑ1 規範的構成要件要素の錯誤
規範的構成要件要素→裁判官の規範的・評価的な価値判断を有するもの
→ 素人的な認識があれば故意責任を問いうる。
(理)構成要件の要素である以上、行為者に故意責任を問いうるにはその認識が必要である。
しかし、
その内容についての正確な認識を素人に求めることは不可能である。
(1) 公務執行妨害罪の適法性の錯誤
(2) 名誉毀損罪における真実性の錯誤
(3) 不作為犯における作為義務の錯誤(例 父親が容易に助けられるのに子供を助けなかった)
�（歉攷妖�地位を構成要件要素、保証人的義務を違法要素と二分して処理する見解
(批)このような区分は必ずしも明確になしうるものではない。
��一般の故意論により処理する。(大谷)
作為義務は規範的構成要件要素である。
↓
規範的構成要件要素は、素人的認識としての、意味の認識を要する。
↓
素人的認識として作為義務があるとの認識があれば、故意は阻却しない。
具体的には、
・他の子供が溺れていると考えた場合
→そもそも作為義務を認識していないから、事実の錯誤(→故意は阻却される)
・自分の子供が溺れているのに助けなくてよいと考えた場合
→素人的認識として規範の問題は与えられていた。
自分が助けなくてよいと考えたことは違法性の錯誤(→故意は阻却しない)
Ｑ2 法律的事実の錯誤
Ｑ3 違法性に関する事実に錯誤ある場合
→故意は阻却しない (理)構成要件に該当する事実についての認識はある。
→違法性の意識の可能性がない場合は、責任が阻却される
(理)違法性阻却事由を認識している以上、行為者は違法性の意識を持ち得ない可能性がある。
***(三)過失 [#a3a7f267]
◆ 体系的地位( Q 犯罪論体系のいずれの段階で検討すべきか)
過失とは →注意義務を怠る内心の態度
過失犯の実行行為→客観的注意義務違反
過失の主観的事情は、責任段階で判断する。
(理)客観主義刑法を徹底させる立場は、判断対象も客観的であるべきであるとする。
(批)客観主義とは判断基準が客観的であることを要求しているのであり、
判断対象まで客観的である必要はない。
律上要求される義務を払っても結果が避けえない場合に処罰するのは不当である。
そこで、
過失犯は違法性のレベルでも取り上げるべきである。(注意義務違反という違法行為を行うものと考える)
(理)複雑な現代社会においては，社会的に有用な行為について，必要とされる注意を尽くした場合には，たとえ結果が生じたとしても，違法と評価すべきではない。
しかも、
構成要件の問題でもある(過失の有無は、まず構成要件段階で取上げ判断する)
(理)結果が不可抗力で発生する場合は構成要件該当性もないから、
なお
理論的にはその後の違法性・責任でも過失の有無が影響することになるが、
構成要件段階で過失があれば、後の段階ではこれがある。
事実上、構成要件段階以降では、過失の有無についての判断をする必要はない。
◆ 構造 (注意義務違反・予見可能性の内容)(旧過失論VS新過失論VS新新過失論)
◆ 成立要件
◆ 過失の種類
業務上過失の刑の加重理由
◆ 信頼の原則
複数の者が関与する事務に関して，他の関与者が規則を守り適切な行動をとることを信頼するのが相当な場合には，
たとえ他の関与者が不適切な行動をとり，それと自己の行動とが相まって構成要件的結果が発生しても，
行為者は，それに対する過失責任を問われないとする原則
Ｑ 根拠(許された危険の法理)
Ｑ 過失犯の構造との関係
Ｑ 適用範囲
◆ 結果的過重犯 →基本となる犯罪から生じた結果を重視して，
基本となる犯罪に対する刑よりも重い法定刑を規定した犯罪
※処罰根拠
→基本となる犯罪に重い結果発生の危険がある点にある。
基本犯の中に、重い結果を生じさせる高度の危険性を含んだ犯罪であり、
それを特に重く処罰しようとしたものである
※ 要件 (重い結果の発生に過失ないし予見可能性は必要か)
→基本となる構成要件に該当する行為と重い結果との間に因果関係があれば
重い結果について責任を問える
(理)責任主義の観点からすれば、
重い結果について過失が認められない限り、責任は問えないはずである。
しかし、
もとの行為から当然予想されるその射程範囲内の波及効果として発生した重い結果は、
責任を問うても責任主義には反しない。
*第４章 [[構成要件>法令ノート/刑法/構成要件]] [#wbd1d612]
*第６章 違法性阻却(犯罪成立阻却事由1) [#a45277aa]
**(一)違法性の概念→行為が法に違反すること [#q75d2f69]
形式的違法性VS実質的違法性
違法性の実質
→社会倫理規範に違反した法益侵害にある
(理)刑法の目的は社会倫理秩序を通じた法益保護にあるから，
◇１違法性の本質 → 社会的相当性を逸脱した法益侵害
行為無価値論ＶＳ結果無価値論
客観的違法性論ＶＳ主観的違法性論
◇２主観的違法要素
Q1 違法性の有無、程度を決定する上で、主観的な要素を考慮する必要があるか。
→ある
(理)�ー膣僂鯣獣任靴覆韻譴弌�違法か否か判断できない場合は少なくない。
(猥褻罪と医者の治療行為の区別、通貨偽造罪における行使の目的の有無)
逆に
��内心の状態によて違法性が減少する場合が考えられる。
(正当防衛における防衛の意思の有無によって、行為の社会的相当性が変化する)
Q2 どのようなものがあるか
故意
正当防衛における防衛の意思
緊急避難における避難の意思
被害者の承諾における承諾の認識
◇３可罰的違法性の理論
意義
根拠(何故に違法性が阻却されるのか)
→�ー村租�違法性論
刑罰法規は一定の違法性を予定している。
従って、
違法性が軽微である場合は違法性阻却され、犯罪は不成立となる
��刑法の謙抑性
有無の判断基準
体系的地位(違法性阻却説 VS 構成要件該当性阻却説)
**(二)違法性阻却 [#j47a2694]
根拠(何故に認められるか) →実質的違法性論
違法性の本質は、社会倫理規範に違反することにあるから、
違法性阻却の根拠は当該行為が社会的相当性を有する点にある
**(三)正当行為 [#i2b98723]
・§35の趣旨
・法令行為
・争議行為
・業務行為
・その他の正当行為
各種のケース(意義・根拠・要件をまとめておくこと)
***１ 被害者の承諾(特に傷害の場合) [#i2cc4fc0]
法益の主体である被害者がその者の法益に対する侵害に同意すること
Q1 処罰阻却根拠( 違法性阻却の有無)
→違法性阻却事由
(理)条文には、同意のないことは要求されていない。
しかし、同意がある場合は傷害行為も社会的相当行為である。
Q2 違法性阻却の要件
�‘碓佞瞭睛討�被害者にとって処分可能な法益であること
�⊆�ら有効な同意をなすこと
�Ｆ碓佞蝋坩抻�に存在していなければならない。
さらに、同意ある侵害行為が社会的相当性あるというために、
�て碓佞良充─�
�ス坩拏圓砲茲詁碓佞稜Ъ�
Q3 いかなる傷害においても同意は有効か
この点、重大な傷害に対する承諾は無効とする見解がある。
しかし、傷害行為の一部を同意のみで不可罰として扱うのは困難である。
従って、
およそ同意ある以上、すべて処罰されない。
このように解しても、
重大な傷害の場合は殺意を認定できるから、不都合はない。
Q4 錯誤に基づく同意の効力
→無効説
(理)このような場合は、真実において同意してはいない。
VS有効説
(理)法益侵害について意味を認識して同意している以上、
同意自体には何ら錯誤がない
(批)意味を認識していれば、いかなる同意も有効であると考えるのは極端である。
Q5 推定的同意(意識不明の負傷者を医者が手術する行為は、違法性は阻却されるか)
→違法性を阻却する
(理)被害者は同意を与えていないが、
事態を正しく認識していれば負傷者は同意したであろう。
このような同意を推定して行う行為は社会的相当性がある
***２ 推定的承諾 [#s1770171]
***３ 治療行為：→治療のために医学上一般に承認されている方法によって人の身体に加える侵襲 [#d4f403c5]
***４ 安楽死 [#x6cc6c24]
***５ 自救行為 [#i884a82e]
→正当防衛を認めるだけの侵害の急迫性・現在性は存在しないが、
国家機関の救済を待っていては権利の回復が困難になる場合、
侵害者に対し自ら実力により救済を図る行為
Ｑ そのような概念を認められるか
→一般的には肯定される
(理)国家機関が法秩序の回復をするいとまがないのは、正当防衛と同じである。
また
そのまま放置すれば法が不法を擁護する結果となりかねない。
但し、
自力救済の禁止の趣旨を没却するおそれがあるから安易に広く認めることはできない。
次のような厳格な基準のもとで認められる。
�＿麌�すべき権利が正当であり、
��回復手段が相当性であること
�９餡箸竜澪僂鯊圓弔海箸�できないような回復の必要性・緊急性があること
�ぜ�救の意思があること(主観的正当化要素)
***６ 義務の衝突： [#h74daa5d]
→両立しない複数の法律上の義務が同時に存在する場合で，
一方を履行するために，他の義務を犠牲にすること
***７ 許された危険 [#r90a6a9d]
**(四)正当防衛 → 急迫不正の侵害に対してやむを得ずにした行為 [#sf4bed77]
"正当防衛･緊急避難.png"
◇ 要件
「急迫」とは→法益侵害の危険が切迫していること
「不正の侵害」とは(対物防衛の評価)
防衛の意思の要否
防衛の意思の認定
□｢急迫｣性の要件
Q1 攻撃をあらかじめ予期している場合も急迫性は失われないのか。
急迫性ある侵害とは、予期しない侵害のことを指す。
しかし、予期によって急迫性が当然に失われるものではない
Q2 行為者が進んでその機会を利用し積極的に相手に加害する意思で侵害に臨んだ場合
この点、急迫性が失われるとする判例がある。
しかし、
急迫性は客観的な状況の問題であるから、
急迫性の存在は防衛者の意思によって存否が左右されるものではない。
Q3 挑発行為がある場合
急迫性が客観的な状況の問題である以上相手の攻撃が間近に迫っていれば急迫性はある。
但し、挑発行為による攻撃は、社会的相当性ある行為とは言えない。
しかも、このような場合を不処罰とするならば、逆に法秩序を乱すことになる可能性がある。
従って、反撃行為に正当防衛は成立しない。
Q4 喧嘩の場合
一方の攻撃が新たな別個の侵害の開始と認められるなら認める余地がある。
□｢不正｣の侵害→法秩序に違反すること
Q 対物防衛は正当防衛となるか
急迫不正の侵害の「不正」（§36-1）とは刑法上の違法性を意味するのか。
→刑法上の違法性に限らない。(動物による侵害に対しても正当防衛は可能)
(理)処罰するための違法と正当防衛が可能かどうかの不正とは別に考える。
□「防衛するため」とは(Q 防衛の意思の要否)
違法性の本質は社会倫理規範に違反する法益侵害またはその危険にある。
とすれば、
社会的に相当といえる行為については、違法性が阻却される。
正当防衛が、処罰を阻却されるのはまさに、社会的相当性ある行為であるからである。
Q 防衛行為が社会的に相当な行為と言いうるには、
→防衛する意思を必要とする。
(理)行為は主観と客観の統合体である
↓
内心が違法性に影響を及ぼす(主観的正当化要素を認める)
Ｑ偶然防衛の当罰性
日頃から気に入らない男を殴る
→ たまたま被害者もまさに殴ろうとしたところだった
（防衛の意思の要否を論証して）
正当防衛の成立には、防衛の意思が必要である
従って、
かかる意思を欠く以上、正当防衛として違法性が阻却されない
Q2 防衛の意思の内容として、防衛の意図まで要求されるか。
思うに、
防衛行為は興奮・逆上して反射的になされるものである。
従って、防衛の認識で足りる。防衛の意図までは必要ない。
すなわち、
防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識しつつそれを回避しようとする心理状態をさす。
但し、
積極的加害意図がある場合、はもはや防衛の意思があるとは言えない。
侵害を回避しようとする意思すら認められないからである。
Q3 自招の侵害に対する正当防衛の成否(喧嘩と正当防衛)
◇ 過剰防衛 →急迫不正の侵害に対し，防衛の意思で反撃行為を行ったが，その反撃行為が防衛の程度を超えた場合
Q2 類型
防衛行為の結果が他人に生じた場合(例 殴られそうになったので、小石を投げたら近くを通った人に当たった)
→緊急避難
(理)正である者に反撃することで現在の危難を回避したと言うべきである。
また
防衛の意思には避難の意思も含まれる。
Q3 刑の減免の根拠
→違法性も責任も減少する
(理)�ゞ杁涵�況においては行き過ぎがあっても強く非難できない。
一方
��不正行為から自分を守る行為である
◇ 盗犯等防止法の特則
**(五)緊急避難 [#f0c30c17]
→切迫する危難を避けるために，危難の発生原因とは無関係な第三者の法益をやむなく侵害する行為
正当防衛との異同
◇ 根拠(何故に不可罰とされるのか)
→違法性阻却説
(理)緊急避難行為は重要な利益を保全するための社会的に相当な行為である
VS 責任阻却説
(批)§37本は、他人の行為についての緊急避難を認めているが、
このような場合には、期待可能性がないとはいえない。
また
侵害される法益の価値が、保全される法益より高くても責任が失われる場合はある。
なのに、法益権衡の原則が採用されている。
VS ２分説
◇ 成立要件
現在の危難
補充性
法益の権衡
危難の意思の要否
自招危難と緊急避難の成否
*第７章 責任阻却(犯罪成立阻却事由2) [#s08632bc]
**(一)責任の概念 →非難可能性 [#s1b7a475]
１責任の本質
２責任主義
両罰規定の問題点
結果的加重犯 (予見可能性の要否)
**(二)責任能力の不存在 [#pa8ace3c]
刑罰を科すために責任が要求される
(理)
国民一般から見て、行為について非難可能性がなければ国民の納得が得られず、
刑罰制度が有効に機能し得ないからである
◇ 存在時期
◇ 責任無能力者・限定責任無能力者
責任能力→刑法上の責任を負担しうる人格的能力
◇ 原因において自由な行為の法理
例 酒を飲めば我を忘れて暴れる→事情を熟知しながらも、酒を飲み、人を傷害
意義→みずから精神の障害を招き心身喪失・耗弱の状態で犯罪の結果を惹起した場合には，
その結果について完全な責任を問うとする法理
□ 可罰性の根拠
責任能力は実行行為時に要求される。
犯行が責任無能力状態に行われているから、§39-1によって責任を阻却してよいか
→責任を認めてよい(犯罪決意時に責任能力があれば足る)
(理)犯罪結果が責任能力ある状態での自由な意思決定に基づく結果なら非難が可能だからである
但し、
決意しただけでは危険性は不十分であるから、
未遂犯が成立するのは、あくまで現実に危険性が高まったときである。
従って、
酒を飲んだら寝てしまった場合、未遂罪は成立しない。
□ 実行の着手時期
□ 適用範囲
故意作為犯にも適用されるか
限定責任能力下の行為にも適用されるか
**(四)期待可能性の不存在 [#ddfa72b0]
期待可能性とは→行為の際の具体的事情のもとで，
行為者に犯罪行為を避けて適法行為をなしえたであろうと期待できること
理論的基礎(心理的責任論と規範的責任論)
体系上の位置づけ→責任阻却・減軽事由
期待可能性の有無の判断基準
行為者標準説
平均人標準説
国家標準悦説
期待可能性の錯誤
**(五)正当化事由の認識 [#xff95458]
◇１ 誤想防衛
→正当防衛の要件に当たる事実がないのにその事実が存在すると誤想して行われる反撃行為
類型
Ｑ 正当防衛と同視できるか
Ｑ 故意を阻却するか(事実の錯誤か法律の錯誤か)(§38)
□ 減免の理由→違法性減少＋責任減少
◇２ 誤想過剰防衛
→急迫不正に侵害がないのに，それがあるものと誤信して防衛行為に出たが，
誤想した侵害に対する防衛としては過剰であった場合
"誤想過剰防衛.png"
Ｑ 故意を阻却するか
→阻却しない。
(理)構成要件に該当する事実の認識はあるから
Ｑ §36‐2を適用できるか(過剰防衛として扱ってよいか)
→§38-3の問題として、違法性の意識の可能性の有無によって判断する。
*第８章 共犯【構成要件】２ [#e00d474e]
**１ 総論 [#a1b9093f]
◇ 共犯の種類
必要的共犯→犯罪が成立するために欠くことのできない関与行為として独立に類型化されているもの
Q この場合に共犯の規定を適用できるか
◇ 正犯と共犯の区別(Q 共同正犯･教唆犯との区別) 拡張的正犯概念 VS 制限的正犯概念
正犯→構成要件に該当する行為をみずから行う者(自ら実行行為を行う者)
Q 見張りは正犯か幇助か
◇ 共犯の処罰根拠
純粋惹起説
責任共犯論 VS 違法共犯論
修正(混合)惹起説
→正犯を介して、発生結果に対し物理的・心理的因果性を及ぼした点にある
(理)刑法の目的は法益保護にある
↓
共犯の処罰根拠は法益侵害またはその危険の惹起にある。
↓
但し，自由保障の観点から，犯罪論は構成要件を中心に考察するべきである
↓
正犯の構成要件に該当する実行行為を通じた間接的な法益侵害・危険の惹起にある
"共犯.png"
◇ 共犯の本質･従属性
◆ 実行従属性(Ｑ従属性の有無(共犯従属性説 VS 犯罪独立性説))
→正犯が実行行為に着手して初めて処罰できる。
(理)共犯は正犯者の意思ないし規範意識を媒介として、犯罪の実現に荷担する。
すなわち、
結果発生に至る現実的危険性に乏しいから、
正犯による法益侵害の危険が発生して初めて処罰すべきである。
◆ 要素従属性(従属性の程度)(最小従属性説 VS 制限従属性説 VS 極端従属性説)
(Q 正犯はいかなる程度まで犯罪の構成要素を具備する必要があるか)
→ 正犯者が違法な行為をなしたことを要しそれで足りる。
(理)共犯は正犯を通じて法益侵害を行う点に処罰根拠がある。
◆ 罪名従属性(異なる構成要件間の共同正犯の成否)(犯罪共同説VS行為共同説))
共犯は正犯行為を通じて法益侵害もしくはその危険を発生させる。
とすれば、
共同して特定の構成要件を実現したという事実を要する。
そうすると、
共犯間の故意が異なる場合、共犯が成立しないかにも見える。
しかし
構成要件的に重なりある範囲については犯罪の共同が認められる。
従って
右の限度で共犯の成立が認められる。
◇ 間接正犯 → 他人を道具として利用することによって犯罪を実現する場合
１処罰根拠(Q 正犯か共犯か)
実行行為とは→構成要件が予定する結果発生の危険を有する行為である。
そして、
間接正犯の被利用者には規範的障害がない
故に、
被利用者を利用する行為は可罰性を帯びる
２ 成立範囲
→ 直接正犯と同視しうるかという観点から論じるべきである。
(理) 間接正犯は、あくまで正犯であるので、正犯は共犯の判断に先行すべきである。
制限従属性説を採れば、常に教唆犯が成立するという結論も不当である。
□(1)身体活動を利用する場合
□(2)構成要件要素を欠く他人の行為を利用する場合
�仝琉佞里覆ぜ圓旅坩戮鰺�用する場合
・異なる故意犯の利用(例 あのマネキンを殴れ→マネキンは実は人だった)
→間接正犯が成立する。
(理)確かに器物損壊の故意ある者は、反対動機の形成可能性がある。
しかし、
傷害罪の規範には直面していない
故に
傷害については，反対動機の形成可能性がない。
�¬榲�のない者の行為を利用する場合( ｢教材用｣と偽り偽造通貨を作らせる)
→間接正犯が成立する(目的なき故意ある道具)
(理)目的がない者は、犯罪事実を認識していないから、
反対動機の形成可能性はない。
��身分のない者の行為を利用する場合(公務員が妻に賄賂を受け取らせた)
→間接正犯の成立する(道具となった者は幇助犯として処罰される)
(理)身分ない者も自分の行為の意味は分かるから、道具とは言えないとも言える。
しかし、
身分ない者は犯罪の中心として行動する意識がないから、
反対動機の形成可能性が著しく低い。
よって
身分ない者を道具として利用できる。
�づ�法行為を利用する場合(Ａを騙して格闘家のＢに攻撃させる→反撃でＡが重傷)
→間接正犯は成立しない
(理)法益侵害がねらい通りに発生するか否かは、偶然性の介在する部分が大きい。
したがって、
Ｂの道具性は肯定できない．
�ト鏗下埃�身の行為を利用する場合
□(3)故意ある幇助的道具を利用する場合(上司の命令で偽造文書と知りながら文書作成)
被利用者は故意を有した上で、自ら実行行為を行っている。
しかし、
単なる機械的行為を行っているに過ぎない場合は、
利用者にとって一方的に利用されている道具に過ぎない
従って、
利用者が間接正犯として処断される
◇ 自手犯
→正犯者自身の手による直接の実行を必要とする犯罪
範囲
**２ 共同正犯 [#s1c8349c]
→�々坩拏堊蠍澳屬飽媚廚力⇒蹐�あって、(共同実行の意思)
�∩蠍澆紡召琉貶�の行為を利用･補充して犯罪を発現すること
◇ 処罰根拠
犯罪の一部を実行したに過ぎないものも「すべて正犯とする」(§60)
Ｑ 一部実行全部責任の原則の根拠
→共同実行の意思のもとに相互に他の共同者の行為を利用し補充しあうので
物理的・心理的にも犯罪の実行が容易になり、
法益侵害の可能性が倍加する点にある。
複数の者が相互に、�（�理的影響のみならず、
��教唆・心理的幇助により強い心理的影響を及ぼしあい、
単独犯に比し、結果発生の蓋然性を高めた点に、
自らの惹起しない結果を帰責させる根拠がある
◇ 要件１(共同実行の意思)
◆ 共謀共同正犯→二人以上の者が一定の犯罪を実現することを共謀し，
共謀した者の一部の者がその犯罪を実現した場合には，
実行行為に関与した者も含め，共謀者全員について共同正犯とするもの
Q1 肯定してよいか
共同正犯も正犯であるが、危険性のある行為を行わなければ正犯とは言えない。
その意味で、正犯たりうるには、実行行為を行わねばならないかに見える。
しかし、
現実には、犯罪計画立案の中心人物が実行行為には参加しないことは多い。
そこで、
謀議に加わったに過ぎない者を共同正犯(§60)として処罰できるか
思うに、
一部実行全部責任の根拠は、
共同実行の意思の下に相互に他人の行為を利用し補充しあって犯罪を実現する点に求められる。
この点を満たしているなら、実行行為に向けて行為を共同するに過ぎない場合も正犯とすべきである
Q2 その理論構成
共同意思主体説
間接正犯類似説
拡張的正犯説
共同実行評価説(前田)
包括的正犯説(大谷)
Q3 成立要件
�＼吉箸箸靴討龍ζ碓媚廚梁減�
�⊆孫圓班床舛任�るだけの共謀の事実
�６λ甜圓里い困譴�による実行行為の存在
◆ 片面的共同正犯→実行行為共同の事実が認められる場合において，
実行行為共同の意思が一方にだけ存在し，共同者各自には存在しない場合
Ｑ 共同実行の意思がない者を処断できるか
→できない
(理)共同正犯として一部実行全部責任を負う根拠は、
意思を通じて犯罪を共同実行することで、物理的・心理的に犯罪結果の実現が容易になるからである。
従って、
共同正犯としての処罰のためには、共同実行の事実と共同実行の意思が必要である。
ところが
片面的共同正犯においては、共同実行の意思にかける。
◆ 過失犯の共同正犯
(過失犯は無意識を本質とするから、共同実行の意思が認められないのではないか)
→認められる。
(理)過失犯にも注意義務違反としての実行行為が認められる。
そして
この実行行為を共同して行うことは観念できる。
◆ 結果的過重犯の共同正犯
Q1 結果的加重犯の処罰根拠
↓
基本となる犯罪に重い結果発生の危険がある点にある。
とすれば、
基本犯を共同して犯せば、当然予想される波及効果についても責任を問うてよい
◆ 承継的共同正犯→先行者が犯罪の実行に着手し，まだ実行行為を全部終了しない間に，
後行者がその事情を知りながらこれに関与し，先行者と意思を通じて
残りの実行行為をみずから単独で，または先行者と共に行い犯罪を完成する場合
Ｑ 後行者を共同正犯として処罰できるか。( 参加者の責任の範囲)
→利用補充関係ある時に限って共同正犯の成立を認める
(理)先行者と後行者が相互に利用補充しあって一定の犯罪を実現することは可能である。
もっとも、
後行者の行為と無関係な先行者の行為・結果に利用補充関係は認められない。
◇ 要件２(実行行為の共同)
◆ 予備罪の共同正犯の成否
意思の連絡の下に予備行為を共同することを処罰できるか。
予備行為にも実行行為を観念できる。
従って、
そのような行為を共同して実行したばあいには共同正犯としての処罰を認めるべきである。
Ｑ 他人予備行為をした者は予備の正犯か
◆ 不作為の共同正犯の成否
◆ 共同教唆･共同幇助(教唆・幇助の共同正犯の成否)
**３ 教唆犯 [#la16672a]
◇要件１(教唆の故意)
◆ 未遂の教唆(アジャンプロヴォカトェール)
(Q 結果が発生しないのを知りつつ犯罪を教唆した場合)を処罰できるか)
→処罰できない
(理)未遂処罰には処罰に必要な危険性の発生が必要である。
ところで、
共犯の処罰根拠は、正犯を解して危険を発生させる点にある。
とすれば、
教唆者にそのような結果発生の認識がなければ、教唆の故意に欠ける。
◆ 過失による教唆(成立するか)
→否定
(理)�ゞ戯兇箸靴討領犒神�がない
��教唆に過失まで含ませることは、故意犯の処罰が原則とする§38-1の趣旨に反する
◇要件２(教唆行為)→他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせる行為
◆ 過失犯に対する教唆(成立するか)
→認められない。
(理)過失犯の犯意を生じさせることは不可能だからである。
◆ 不作為犯に対する教唆
◆ 不作為による教唆
◆ 片面的教唆
◆ 予備の教唆の成否
◆ 再間接教唆(間接教唆犯をさらに教唆する行為)を処罰できるか
→肯定(これも教唆である)
(理)共犯の処罰根拠は間接的な法益の侵害にある。
とすれば
犯罪行為を唆すことが教唆である
◆ 幇助の教唆(処罰できるか)
◇要件３(正犯の実行行為)
◆ 教唆の未遂(教唆したが正犯が実行に着手しなかった場合に教唆者を処罰できるか)
→ 処罰できない
(理)教唆犯の処罰根拠は正犯を介して間接的に法益侵害の結果を発生させた点に求めるべきである。
正犯が実行に着手しなければ法益侵害の結果を発生させているとは言えない。
**４ 従犯 [#n837ad8e]
◇要件１(幇助の故意)
◆ 片面的幇助の成否
→肯定(正犯との意思の連絡は必要ない)
(理)狭義の共犯の処罰根拠は正犯を通じて法益侵害ないしその危険を惹起した点にある。
◆ 過失による幇助 →処罰できない。
(理)処罰範囲が不当に広がるし、
処罰の必要性が認められるほどの危険性も認められない
◇要件２(幇助行為)→実行行為以外の行為によって正犯を補助し，その実行行為を容易にする行為
◆ 不作為犯に対する幇助
◆ 過失犯に対する幇助 →否定 (幇助者に注意義務違反がある場合に
過失犯として処罰すれば足りる)
(理)処罰するだけの法益侵害の発生の危険性が認められない
◆ 予備の幇助(処罰できるか)
◆ 間接幇助(処罰できるか)
◆ 教唆の幇助
◇要件３(正犯の実行行為)
**５ 共犯と身分(§65-1�△硫鮗瓠Ρ人僂鬚瓩阿詭簑蠹�) [#a3bae24e]
"共犯と身分_1.png"
"共犯と身分_2.png"
◇(Ａ）身分者に加巧した非身分者の罪責（犯罪共同説ｖｓ行為共同説）
Ｑ §65条１項２項における「身分」の意義
両者は同一の意義に解すべきか
次のものは同条の「身分」に当たるか Q1 常習犯における常習性
Q2 業務上横領罪(§253)における
業務上財物を占有する地位
強姦犯は身分犯か
女性は強姦罪の共同正犯となりうるか
Ｑ 通常の人が、業務上他人の物を占有する者と共同で横領行為をなした場合、
§65-1 OR §65-2のいずれで処理すべきか。
→業務上横領罪(§65-1)
(理)通常の人からすると、業務上の占有者であることは真正身分である。
→処断刑は横領罪による
(理)単なる占有者が業務上物を占有する者と共犯行為を行った場合、
§65-2により単純横領が成立することとの均衡を欠く。
Ｑ １項と２項の関係をどのように解すべきか
→身分のない者も共犯とする(§65-1)
非身分者には通常の刑を科す(§65-2)
→一項は真正身分犯の規定
二項は不真正身分犯の規定である
(理)一項は「身分によって構成すべき犯罪」
二項は「身分によって特に刑に軽重がある場合」との文言に着目
Ｑ§65-1（本条項は 非身分者も身分者の共犯となることを定めたもの)
(｢成立｣の問題) (争いなし)
Q1 不真正身分犯にも適用されるか（適用範囲１）
Q2 共同正犯にも適用されるか （適用範囲２）(Q§65-1｢共犯｣に共同正犯を含むか)
→肯定
(理)非身分者も身分者を通じて法益侵害は可能である。
Ｑ§65-2（本条項は非身分者の科刑の方法を定めたもの)(争いなし)
Q1 不真正身分犯については「成立」の問題をも定めていると解するべきか
Q2（Ｂ）のケースにも本条項を適用してよいか
◇(Ｂ）非身分者に加巧した身分者の罪責（共犯従属性説ｖｓ共犯独立性説）
�／神疑畔�犯の身分者が非身分者に教唆･幇助した場合
�� 〃 非身分者が身分者に教唆･幇助した場合 → §65の問題そのもの
�Ｉ埒神疑畔�犯の身分者が非身分者に教唆･幇助した場合
�� 〃 非身分者が身分者に教唆･幇助した場合 → §65の問題そのもの
**６ 共犯の錯誤 [#oc529a6e]
◇ 同一共犯形式間での錯誤
◆ 共同正犯の場合
Ａ窃盗の意思･Ｂ強盗の意思の場合、Ａ殺人の意思･Ｂ傷害の意思の場合の処理
◆ 教唆･幇助の場合(Ｘ宅への窃盗を教唆したらＹ宅に窃盗)
→窃盗罪の教唆（六一条、二五三条一項）
(理)構成要件の範囲内で行為者の認識と、事実は重なり合いを認められる
◇ 異なる共犯形式間での錯誤
◆ 共同正犯の場合
◆ 教唆･幇助の場合(窃盗を教唆したら、強盗を行った)
→窃盗罪の教唆
(理)（法定的符合説の論証をして）
教唆犯も、犯罪に重なり合いが認められる限度で罪責を負う。
そして
窃盗罪、強盗罪それぞれの保護法益は他人の財産である。
また、行為態様としても奪取罪として、共通性が見られる。
◇結果的加重犯の錯誤(Q 教唆の結果、正犯者が重い結果を引き起こした場合の教唆犯の責任)
→ 責任を問いうる
(理)
結果的加重犯は、重い結果につき過失を要する。(通説)
ところで
Q1 結果的加重犯の処罰根拠は
→基本となる犯罪に重い結果発生の危険があるからである。
では
Q2 基本犯から当然予想される波及効果に当たる結果につき教唆者にも過失があるか
→ある
◇間接正犯の錯誤(間接正犯の意思で教唆の結果を招いた場合の処理)
→教唆犯として処断
(理)（法定的符合説から）
認識と事実との間に重なり合いの認められる限度で罪責を負う。
ここに、他人を利用して法益侵害の結果を発生させる点からして、
間接正犯の故意は教唆犯の故意を含む
一方で、
間接正犯は教唆犯よりも罪責は重い。
**７ 共犯と中止犯 [#k24ce1ba]
◇ 中止犯の成立要件
→正犯による結果発生を防止したこと
但し、
正犯の障害未遂が共犯の中止行為に基づく場合に限る。
(理)共犯の中止行為と結果発生の防止との間に因果関係が必要だからである。
◇ 共犯からの離脱
例 二人で家に強盗に入る計画
�＾貎佑�、押し込む前に怖じけずいてやめる
��一人が、押し込んでからやめる → その一人の罪責は？
離脱とは→共犯関係にある者の一部が犯罪の完成に至るまでの間に
犯意を放棄し、自己の行為を中止してその後の犯罪行為に関与しないこと
共犯関係が成立してから犯罪が完成するまでの間に，
共犯関係にある一部の者が共犯関係を断ち切って共犯関係から離れたが，
他の共犯者が共犯関係に基づく実行行為を行い，犯罪的結果を実現した場合
効果(犯罪行為を断念した者の罪責)
→未遂犯として扱われる。(大塚)
◇ 実行共同正犯からの離脱(着手後の離脱の場合)
→他の共犯者の実行行為を阻止して、
共同意思に基づく実行行為を阻止する必要がある。
１、まずこの者が共犯関係から離脱しているか
２、未遂犯として処断されるのは、因果性がない以上、
結果への責任を問うわけにはいかないからである。
とすれば、
そのような離脱の効果を認めるには、
離脱者が
自己の行為と他の行為者のその後の行為との
因果関係を切断する必要がある。
他方、
結果が発生した場合でも、積極的な行為によって自己の行為と結果との因果性を遮断すればよい
怖じけずいただけでは、着手前であっても、離脱があるとは言えない。
他の行為者への離脱の意思表示の有無が重要である。
一方、
押し込んでから行為を止めた者は、
ただ自己の行為を止めたのみならず、他の行為者を積極的に止めさせようとする必要がある
Ｑ では、着手後の離脱が認められる場合、結果が発生しても中止を認めるべきか。
→離脱が認められる者には、§43但書が適用ないし準用される
(理)中止犯としてして処断される以上、§43但書の文言に反しない。
しかも
行為と結果との因果性を除去している場合には、報償を与えるべきである
◇ 共謀共同正犯からの離脱(着手前の離脱の場合)
→共謀関係からの離脱の意思表示をなせば足りる
それだけで、共同実行の意思が解消されるからである。
*第９ 罪数 [#s52c5355]
**１ 犯罪の個数 [#h4e5bea1]
罪数決定の基準
本来的一罪
一罪 包括一罪
集合犯
結合犯
包括一罪（狭義）
接続犯
法条競合→一つの犯罪事実につき適用可能にみえる罰条が複数ある場合
特別関係
吸収関係
補充関係
択一関係
不可罰的事前行為
不可罰的事後行為→犯罪の完成後にその犯罪に伴う違法状態が継続する場合において，
|一罪|単純一罪|>||
|~|評価上一罪|法条競合|�‘段夢愀�&BR;�∧篏軸愀�&BR;�Ｂ魄豐愀�&BR;��(吸収関係)|
|~|~|包括一罪|�々坩抂豸�+結果一個&BR;��行為一個+結果数個&BR;�９坩擔�個|
|数罪|科刑上一罪|>|観念的競合(§54-1前)|
|~|~|>|牽連犯(§54-1後)|
|~|併合罪(§45)|>||
不可罰的事前行為
不可罰的事後行為→犯罪の完成後にその犯罪に伴う違法状態が継続する場合において，
違法状態のなかに通常含まれている行為であるため，
すでに構成要件によって評価しつくされている行為
Ｑ罪数決定の基準
**２ 科刑上の一罪（数罪１） [#oa020cb2]
観念的競合 （§54-1前 §54-2）
「一個の行為」の意味
牽連犯 （§54-1後 §54-2）
成否の判断基準
**３ 併合罪 （数罪２）（§４５〜§５３） [#fc8b9e8c]
意義
処分
単純数罪
*第10章 刑罰制度 [#a51670d6]
１．刑罰権 （一）一般的刑罰権
個別的刑罰権 観念的刑罰権 刑の適用の問題
現実的刑罰権 刑の執行の問題
（二）刑罰権発生要件 犯罪が成立していること（原則）
２．刑罰の種類 cap2(§9,§12〜§20) → 別紙
没収の要件 → 別紙
没収の要件 → 別紙
（ ）刑罰の適用（観念的刑罰権の問題）
３.刑罰の適用（観念的刑罰権の問題）
１．法定刑の決定 法定刑とは 刑罰法規の各本条において定められている刑
(1)法定刑の決定 法定刑とは 刑罰法規の各本条において定められている刑
その軽重 §10
２．処断刑の決定 処断刑とは 処断の範囲を画する刑
（１の修正） 法定刑に一定の加重・減軽を施してえられた刑
(2)処断刑(法定刑に一定の加重・減軽を施してえられた処断の範囲を画する刑)の決定(１の修正）
法律上の加重事由 累犯加重(§56〜59) 併合罪加重
〃 減軽事由 下記
裁判上の加重事由 なし
〃 減軽事由 酌量減軽(§66,67)
|法律上の加重事由|累犯加重(§56〜59)、併合罪加重|
| 〃 減軽事由|CENTER:下記|
|裁判上の加重事由|CENTER:−−|
| 〃 減軽事由|CENTER:酌量減軽(§66,67)|
加減例(§68〜72)
加減の順序→ 再 法 併 酌
加減例(§68〜72)
加減の順序→ 再 法 併 酌
┌────────────────┬────────────┐
│ 累犯(§56) │ 三犯以上(§59) │
┌──┼────────────────┼────────────┤
│ │ 懲役に処せられた者 又は │ │
│ │ これに準ずべき者が │初犯と再犯 左の要件が │
│要件│ 刑の執行が終了した日から │再犯と三犯 に │
│ │ 5年内に犯罪を犯し │初犯と三犯 あること │
│ │ その処断刑が有期懲役であること│(M42,6,21) │
├──┼────────────────┼────────────┤
│効果│上限のみ2倍以下とする (§57) │ 同 左(§59) │
└──┴────────────────┴────────────┘
３．宣告刑の決定（刑の量定） 宣告刑とは→処断刑の範囲内で裁判官が刑を量定し、
具体的に決定して言い渡される刑
||CENTER:累犯(§56)|CENTER:三犯以上(§59)|
|要件| 懲役に処せられた者 又は&BR;これに準ずべき者が&BR;刑の執行が終了した日から&BR;5年内に犯罪を犯し&BR;その処断刑が有期懲役であること|初犯と再犯&BR;再犯と三犯&BR;初犯と三犯 に&BR;&BR;左の要件があること&BR;(M42,6,21)|
|効果|上限のみ2倍以下とする (§57)|CENTER: 同 左(§59) |
（ ）刑罰の執行（現実的刑罰権の問題）（有罪判決確定後の刑罰権）
(3)宣告刑(処断刑の範囲内で裁判官が刑を量定し、言い渡される刑)の決定（刑の量定）
執行猶予の要件・取消→別紙
４．刑罰の執行（現実的刑罰権の問題）（有罪判決確定後の刑罰権）
（ ）刑罰の消滅
執行猶予の要件・取消→別紙
┌──────────────┬──────────────────┐
│ 消滅事由 │ 効 果 │
├──────────────┼─────────┬────────┤
│ 犯人の死亡（法人の消滅） │観念的 │ │
│ 恩赦 │又は 刑罰権消滅 │ │
│ 時効 (§31〜34) │現実的 │執行の任意的免除│
├──────────────┼─────────┼────────┤
│ 刑の執行終了 │ │刑罰執行権の消滅│
│ 仮釈放期間の満了 │ │ 〃 │
├──────────────┤現実的刑罰権の消滅├────────┤
│ 執行猶予期間満了 │ │刑の言渡効喪失 │(§27)
│ 刑の消滅（復権）(§34の2) │ │ 〃 │
└──────────────┴─────────┴────────┘
５．刑罰の消滅
|CENTER:消滅事由|>|CENTER:効 果|
|犯人の死亡（法人の消滅）&BR;恩赦&BR;時効(§31〜34)│観念的又は現実的刑罰権消滅&BR;執行の任意的免除|
|刑の執行終了&BR;仮釈放期間の満了|現実的刑罰権の消滅 |CENTER:刑罰執行権の消滅&BR;〃|
|執行猶予期間満了&BR;刑の消滅（復権）(§34の2)| |刑の言渡効喪失 │(§27)
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